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守山菜穂子 | Mint Days

ブランドコンサルタント 守山菜穂子のブログです。

感受性の守り方

「感受性」という言葉を知ったのは
6歳の時です。

私は、思ったこと、感じたことを
そのままズバズバッと口にしてしまい、
大人から煙たがられるような子供でした。

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例えば、
どこかに電車で出かけたある日。

混雑した駅階段で、左側通行や、斜めに歩いている人がたくさんいて
「すごく、おかしい」
そう感じたことを覚えています。

みんな、ルールに反してる! 子供心にそう思ったのでしょう。
大混雑した駅のホームに向かう階段で、
突然「みなさん、右側をちゃんと歩いてくださーい!」と
大人相手に交通整理をし始めて、
親を慌てさせたことがあります。

12色の水彩絵の具や、24色の色鉛筆は
白から黒までグラデーション状に
常にきちんと並んでいないと「おかしい」と思っていました。
「キミドリ」と「ミドリ」の場所が逆で、
グラデーションが途切れているのに、
なんでみんな気づかないんだろう?
そんなことに憤っていました。

ショッピングセンターで面白いものを見つけると
周囲を忘れて、パッと駆け出して行ってしまい
よく迷子になったそうです。

好きなものと、嫌いなものがハッキリしすぎて
「適当にうまくやる」というのが非常に苦手でした。
面白いと思うことや、変だと思う感覚を、
子供ながらに「うまくコントロールできないな」と
いつも思っていました。

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ある土曜日。父と2人で、近所の喫茶店に
クリームソーダなどを飲みに行ったことがありました。
のんびりした時間の中で、父がこう言ったのです。

「菜穂子は、感受性が豊かなんだね。」

話の流れは覚えていません。
たぶん、また何かで誰かとぶつかった直後だったのでしょう。

「…感受性ってなに?」

「いろんなことに気づく、ってこと。
  菜穂子は人よりも、いろんなことに気づくんだね。」

「…….」

「それはいいことだよ。でも、自分が何かに気づいた時でも、
  みんなは気づいてない時があるんだよ。
  みんなが気づかないことを、許してあげてね」

この時、父に、全てを受け止めてもらった気がしました。
気づいていいんだ、
感じていいんだ、と。

そして、新しい事実を知ったのです。
私はそれまで、周りの人は「気づいているのに、その考えを
口にせず、隠している」とずっと思っていました。
「何で隠すんだろう?こんなに自明なのに!」と
憤りさえ感じていたのです。

「違うんだ。そもそも、気づいてない時もあるんだ!」
「自分の<気づき方>が、人と少し違うんだ!」

 

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そこから30年間の私は、
気づいたことがあっても「気づかないふりをする」訓練を
積み重ねる毎日でした。
大抵、気づいたことをそのまま口にすると、
ロクなことにならないのです。
それは誰かを傷つけ、人の本質を暴き、
本人が隠していることを陽の元に
さらけ出してしまうような言葉でした。

少しずつ、気づかないふりができるようになり、
思ったことを、失礼のないよう
すごーく遠回しに伝えるテクニックを覚え
人から「丸くなった」と言われ、歳をとりました。

それは、身体についている大きな白い「翼」をたたみ、
身体の中にグッとしまいこむような時間でした。

ただ、10代後半からの4年間だけ、
その「翼」を思い切り解き放ったことがあります。
美術大学に通っていたときです。

絶対に、誰の真似もするな。
とにかく、人と違うことを考えろ。
自分だけの表現を見つけろ。
そう言われ続けた4年間。

「翼」を大きく広げ、全力で羽ばたきました。
頼れるものは自分の翼、すなわち「感性」だけ。
美大は、個性豊かな翼の品評会のような場所でした。
人の翼はカッコ良かったし、だからこそ、
人と違う自分らしい翼の使い方を考え抜いた時期でした。

23歳で銀座の広告会社に就職。
私は「翼」をまたきちんとたたんで、
スーツの上着の中にしまい込みました。
気づいたことを口にすると「生意気」「キツイなあ」
なんて言われたり、困った顔をされる。
ひらめきを確信に変えて行動すると「唐突」とか「考えなし」と思われる。
「翼」は人を傷つけるし、迷惑をかけるんだ。
そう思って、また感受性をコントロールし、
色々なことに気づかないふりをしながら
粛々と働く日々を過ごしていました。

 

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39歳になった昨年。独立してビジネスを展開していく中で、
ふと「翼」の存在を15〜6年ぶりに思い出して、
また自分の意識の中に引っ張りだしてみました。

羽を広げて、動かしてみる。
感受性の翼は、ちょっと埃をかぶってはいたものの、
意外なことに、結構ちゃんと動いたし、
むしろ、非常に気持ち良く飛び始めることができました。

友人である、Neffy Maiこと田中麻以ちゃん
こう言ってくれました。

「ただ翼をしまっていたんじゃなくて、
 その間、ずっと育てていたんですよ!
 ねえ、守山さん
 インスピレーション、って言葉がありますよね。
 何から『インスパイア』されるか、わかりますか?
 本来の自分から、インスパイアされるんです。
 自分の行きたい方向に、飛んでいいんです。
 ひらめいたところに、行けばいいんです。」

驚くべきことに、私は30年の間に、翼だけでなく、
その翼を思い通りにコントロールする筋肉も
育てていたようです。
もう、誰かにぶつかったり、人の波に突っ込んだり、
外界からの攻撃を避けきれないようなことは、
たぶん、ないでしょう。

それから、その翼は、大きく広げると、
誰かを守る傘にもなることに気づきました。
そっとまるめると、誰かを温める、
優しい部屋になることもわかりました。
私の羽は、空を切り裂く刃のようではなく、
ふんわりと厚みを増して、柔らかなものになっていたのです。


6歳の時に父が言ってくれた
「菜穂子は感受性が豊かなんだね。」
という言葉に、今でも私は、守られています。

あの時、父がこの感覚を認めてくれなかったら。

「頑固な子どもだ。」とか、
「言うことをききなさい。」
「普通にしてて。」
「変なことを外で口にしないで。恥ずかしいから」
などと、言われていたら。

翼を、もがれていたら。

私はいま、この仕事をしていないと思うし、
こんなブログも書いていないと思うのです。


コンサルタント。
クライアントさんも気づかない問題の根を見つけ、
解決ルートを示し、一緒に進んで行くという仕事。
まだ見ぬゴールを、一緒に探す仕事。

プロデューサー。
メンバーの得意技を見つけて、素早く組み合わせ、
ビジネスという大きな交響曲を作る仕事。


感受性を守ってもらった経験がある私は、
そのやり方を、人に伝える使命を担っている。
と、勝手に思っています。

「ルール」や「常識」ではなく
みんなの「感受性」を、お互いに認め、守り合う。
そんなコミュ二ティを作りたいと、
心から思うのです。

 

All Photo by Naoko Moriyama
 

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