どうやったらセンスが良くなりますか?
センスはどのように磨けばいいですか?
と、聞かれることがあります。
センスは「質」ですが、
センスの芽は、「量」から生まれます。
例えば。
ファッション編集者やスタイリストは、
次シーズンに発売になる洋服を、2週間かけて
「全て」見て回ります(展示会といいます)。
海外のハイブランドから、
ルミネやマルキューで発売になるプリプラ服まで、
あらゆるタイプの、あらゆるブランドで、
先の6ヶ月間に発売される服を
見られるだけ、全て、見るのです。
美容エディターは、
来シーズンに発売されるあらゆる化粧品、
スキンケアアイテム、色もの、ヘアアイテム、サプリメント、
ドライヤーや美顔器、エステやスパ、ダイエット食品など
およそ美容に関する、
全てのメーカーの、
全ての商品資料に目を通し、
商品を触って、香りをかいで、自分の目で確かめます。
ある文芸編集者は、
売れている小説、賞を取ったもの、話題の本、
映像化された本は、時間がある限り全て読んでいます。
ものすごい読書量です。
彼女は、この仕事を始めた時に、
「ギリシャ神話を全て読んだ」と言っていました。
「物語の全ての型はギリシャ神話にある」そうです。
尊敬も、裏切りも、思慕の情も、恋愛も、友情も、
確かに全ての型がそこにあるように思います。
ある建築家は、街を歩きながら、
建物の全体像とディテールを常に確認し、
こまめに写真に収めています。
建物を見るときは、目線の角度を変えて徹底的に。
建築雑誌に目を通すことはもちろん、
海外や国内に出かけた時は、
その土地で見られる建築物をチェックしにでかけます。
彼と街を歩くと、
街が「作品」で覆われていることに感嘆します。
あるネイルアーティストは、
街を歩いていて、綺麗な柄、形、色を見つけると
いつも素早く写真をとっています。
ネイルのインスピレーションにするのでしょう。
インテリア、テキスタイル、ファッション、食器、
料理、花、葉っぱ、誰かがつけているアクセサリー。
そういうもの全てが、彼女の創るネイルの源になっているようです。
友人の漫画編集者は、
そのシーズンにオンエアされている「全ての」テレビドラマを
録画して、深夜、帰宅してから全て見ています。
倍速で早送りしながら見ることも多いとか。
こうやって、様々なパターンの、物語の筋を
頭にたたきこんでいるのです。
普段の会話から「そのセリフ、面白い!いつか漫画で使う」
なとどと言われることもあります。
セリフを、自分の頭の中に蓄積しているのです。
知人のカレー料理のシェフは、
20年近く、毎日、他店のカレーを食べ続けています。
毎日違う店です。
毎日ですよ! 毎日。
顔がインド人に似てきたかもと言っています。
こんな風に、大量の物を自分の中に蓄積することで、
ある一定のジャッジメント・ライン、
つまり「思考の型」が生まれます。
これはかわいい
これはかっこいい
これは新しい
これは古い
これは正しい
これは「あり」
これは「なし」
こういうジャッジは、量を知っているからできるのです。
自分が何かを作るとき、そのジャッジが働きます。
「それしか知らなければ、何も作れない」
ということを、
プロフェッショナルたちは知っているのです。
よくあるでしょう。サッカー選手で
「あの人はサッカーの天才だけど、
実は誰よりも練習していた」
というような話が。
センスの世界でも同じことが言えると思います。
スポーツの世界で「諦めたら試合終了」
というように
デザインやアート、クリエイション、
センスの世界も、全く同じ。
諦めたら試合終了なのです。
生まれながらにセンスが良い人なんて、いない。
センスが良い人は
いくつになっても、たゆまぬ努力を続けている。
彼らを見ていて、そう思うのです。
自分もそうありたいと思います。
この記事の続き:
センスの先にあるものー「洗練されている」という状態
All Photo by Naoko Moriyama 2015
PIGMENT, Shinagawa Tokyo / Tokyo Midtown, Roppongi Tokyo / Hisui Kalgan, Miyazaki Toyama / 139 cent trente-neuf, Shibuya Tokyo / Espace Louis Vuitton, Omotesando Tokyo
こちらの記事もどうぞ