守山菜穂子 | Mint Days

ブランドコンサルタント 守山菜穂子のブログです。

イラストレーター和田誠さんとの思い出

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イラストレーター・グラフィックデザイナーの
和田誠さんが亡くなりました。83歳。
ご冥福をお祈りいたします。

和田さん、優しいイラストやデザインを
たくさん生み出してくださり、
ありがとうございました。

www3.nhk.or.jp

個人的な思い出の、長いブログを書きます。

 

私と和田誠さん、そして
奥様であるシャンソン歌手・料理愛好家 平野レミさんとの
出会いは、1996年の10月。

 

そのとき、大学3年生だった私は、
下北沢の小さなギャラリーで、
友人とイラストの2人展を開催していました。

 

そこにふと入っていらしたのが
和田誠さんと、平野レミさん。
お二人とも「有名人」なので、お顔を見てすぐわかりました。

実はこの時期、編集者だった私の父が
和田誠さんとお仕事をしていて、
「愚娘(!)が下北沢で展覧会をやっているので、
よかったら立ち寄っていただけないか」と
展覧会のDMを渡していたそうなのです。
(後で聞きました)

 

でも全く知らなかった私は、びっくりして、
すごく有名なイラストレーターさんに
自分のイラストを見ていただける!
偶然立ち寄っていただくなんて、すごいチャンス!嬉しい!
と、ドギマギしながらご挨拶した記憶があります。

 

和田さんは、それぞれの作品をじっくりゆっくり見ながら
優しい声で、
「これ、画材は何を使ってるの?」
「どうやってこのテーマを思いついたの?」など
終始丁寧に質問してくださいました。

私が一生懸命受け答えすると、
「ウンウン、いいね」と、終始にっこりしていました。

今思えば、学生の回答ですから、
甘い内容がたくさんあったと思うんですよね。

でも和田さんは、学生の私に、
まっすぐに対等でした。

 

優しい人だなあ…。
プロってこういう人のことをいうのか…。

和田さんの「対等さ」は、
私の中にじ〜んと深く、染み入りました。

 

一方、ご一緒していたレミさんは
「うわ〜!! か〜わいい!」
「この色、キレイね〜〜〜〜〜!!!」
「コレ、面白いわね〜!」

と、終始ハイテンション!

明るくて、大きな声で笑って、褒め上手で、
ビッグスマイルでずっとニコニコしていて、
なんて素敵なお姉さんなんだろうと
感激しました。

小さなギャラリーの中に、
大輪のひまわりの花が、束になって咲いたよう!

身体から、愛があふれていると思いました。

ご一緒しているだけで、調子に乗ってしまいそう。
レミさんは、周りの誰もを元気に、嬉しくする人でした。

 

さて、その半年後。
自宅に突然、和田誠さんからお電話がかかってきました。
「朝日新聞社から、平野レミの本が出るのだけど、
イラストを描きませんか」という内容。

和田さんがアートディレクションと
装丁を手がけるそうです。

素敵なお2人と、一緒に仕事ができる!
天にも登る気持ちでお引き受けし、
お2人のご自宅 兼 アトリエに、
打ち合わせにお邪魔しました。

 

ご夫妻のオリエンを受け、
私がこの本のために描き上げたイラストは、全部で約60点。
さらに、書き文字が40点。
合わせて100点近いイラストを納品。

こんなにたくさんの作品を一気に描くのは
生まれて初めての経験でした。
大学の課題でもやったことがない量でした。

大学4年生の夏休みを丸々かけて
描いて、描いて、描きまくりました。

 

そして秋、できあがってきた本がこちら。
「ド・レミのキッチン」
平野レミ著、朝日新聞社刊
1997年11月発行

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表紙については、実は、何を描くか
特に指定がありませんでした。

和田さんから「好きに描いてよ」って言われた記憶があります。

 

好きにかあ〜。でもレミさんの本だから
きっと、レミさんの写真が大きく入って
私のイラストが、飾り的に入るんだよね?
と思っていたのです。 

 

その頃、アルバイトでイタリアンレストランに
勤めていた私は
アーリオ・オーリオ(ペペロンチーノ)
のシンプルな美しさと、
カリッと揚がったニンニクと
香るバジルを描こうと思いました。

赤いギンガムチェックは、
元気なレミさんのイメージで。

 

ところが実際、和田さんのデザインでは
表紙に私のイラストが全面に敷かれていました。
朝日新聞社からの封筒を開けて、
驚きで「えええ〜〜〜!」と叫びながら
のけぞった記憶があります。

 

これが表紙の原画。
手元に大切に保管してあります。
(はじっこ折れてるけど) 

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実はチェックの大きさ違いで
3パターン描きました。
採用されたのは一番右のもの。

 

まだMacなどデジタル機材で絵を描くのは
一般的でなかった時代。

私は、ロットリング(製図用ペン)で線画を描いて、
一旦コピーを取り、
コピック(色ペン)で着色する
という手法を取っていました。

 

コピーすることで線の質感が均一になるのと、
トナーの絶妙なカーキグレーの色味が好きだったので
このような手法を考えつきました。

コピーの色って、
微妙に「真っ黒」じゃないんですよ。
「粉の色」っていう感じなんです。

 

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タイトル文字も、太・細で2パターン描いています。
採用されたのは上の太い方。

野菜のイラストは、表4(裏表紙)に
採用されました。

 

納品するイラストは
厚手のケント紙に貼り、実際はトレーシングペーパーをかけて
「版下(はんした)」として入稿しています。

そこに朝日新聞社の編集者さんによる
指定紙がくっついています。

この感じ、懐かしいね。
今はイラストも、全部データ入稿です。

 

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表紙の見返しと、扉ページ。

写真の右側、
カバーの見返し部分に、
表紙のギンガムチェックがちょっとだけ、はみ出しているの
わかりますか?

これが和田誠さんらしい遊び心。

 

和田さんがタイトルの文字色に合わせて
選んだであろう、
鮮やかな緑色の見返しの紙は、
上品でとても綺麗です。

若さあふれるイラストに
深みを与えてくれた、上質なデザインです。

自分のイラストがググ〜〜ッと格上げされ、
本ができたとき、
驚き、感激した記憶があります。


一流のデザイナーに料理していただいた
「私、材料」っていう感じ。

 

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20年以上前のデザインなのに
今でも普遍的にチャーミング。
この書体、上品でかわいいですよねえ。

 

普遍性、定番感があるのも、
和田誠さんのデザインの大きな特徴かと思います。

デザインに、無理がないのです。

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各ページのタイトルの書き文字も
全て描かせていただきました。

これは、みんな知ってるあの水性ペン、
ぺんてるの定番「サインペン」で描いています。
このペン大好き。

 

書き文字は、確かイラストをほとんど納品した後に
追加で依頼された記憶があります。
デザインしていて、タイトルも書き文字でやろうと
和田さんが思いついたようです。

「追加でね、文字も描いてよ」みたいな感じで
お電話いただいたのを覚えてます。

「え! タイトル文字、全部ですか!」と言いつつ
私のクセのある文字も採用していただいたのが
自分の生き方を認めていただいたようで
またまた嬉しく思い、頑張りました。

 

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中面はこんな感じで、
イラストをたっぷり使っていただきました。

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イラストだけで構成されたページもあります。

 

レミさんの生活へのプチテクニックは、
驚くべきことばかり。描いてて楽しかったなあ。

ポリ袋を手袋のように使って食材をつぶすとか、
ポリ袋の中で食材を混ぜるというテクは
今では普通になりましたが、20年前は超ザンシン!でした。

この手法、もしかすると
レミさんが発明したんじゃないだろうか。

この本は、朝日新聞でレミさんが生活の知恵コラムを
長年、連載していて、
それをまとめた1冊だったと聞いています。

 

 

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奥付です。

初めて書籍の奥付に自分の名前が載ったこと、
和田さんの隣に(というか僭越ですが上に)載ったことで
すごく嬉しかった記憶があります。

自分が、「初めて作った本」、
別格の思い入れがあります。

編集者だった両親も
たいへん喜んでくれました。

 

書籍は、残念ながら今は絶版になってしまいました。
守山の手元に10冊ぐらいあるので、
見たい人はお声かけてくださいね。

 

 

このイラストを納品し、
本が発行となる少し前の
1997年10月28日。

リクルートが運営する銀座のギャラリー
「ガーディアン・ガーデン G8(ジーエイト)」にて
和田誠さんの個展「時間旅行」が開催されました。

 

会期中に、
「現役美術学生が和田誠氏への質問状をもってのぞむ
トークライブ」
が行われ、
朝日新聞社のお仕事をご一緒した流れから、
守山が代表質問者として登壇することに!

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右:和田誠さん
左:守山菜穂子

 

イベントの様子。
私はこの時、生まれて初めて、
「トークイベント」なるものに登壇しました。

22年も前のことで、何を話したのか
記憶も、記録も
残念ながら残っていないのですが
たぶん
「和田さんがデザインするときに心がけていることは?」
みたいな質問を、たくさんしたと思います。

 

書籍のお仕事をご一緒する中で
和田さんが作り出す「定番」感や「王道」感、
「上質」感にたくさん触れて
それを作り出す秘訣をすごく知りたかったのを覚えています。

 

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中央:和田誠さん
左:守山菜穂子

右の方は、桑沢デザインに通う同世代の学生さんでした。
お元気にされているかしら…。
(お顔とお名前は伏せさせていただきます)

 

スタッフさんがデジカメで
パチリと撮ってくれた写真、
ストロボにより発生する「赤目」も歴史な感じですが
和田さん、笑ってお許しください!

 

こちらに展覧会&トークライブの公式サイトがありました。
(1997年に、美術展の公式サイトを作っていて
 そのアーカイブが今も残っている。
 さすがリクルートさん)

rcc.recruit.co.jp

rcc.recruit.co.jp

 

和田誠さん。 

週刊文春の表紙イラスト、
タバコ「ハイライト」の箱デザイン、
星新一さんや村上春樹さんの小説の表紙など
チャーミングなイラストを描く人。
普遍的な美しいものを作る人。

 

名もなき、いち学生に、
大きな仕事をどーんと任せるという
大胆な発想をする人。

 

優しくて、丁寧で、誰にでも対等な人。

 

あのとき、お仕事をご一緒できたことを、
一生の誇りに思います。
本当にありがとうございました。

 

和田誠さんオフィシャルサイトはこちら。
作品がたくさん載っていますので、ぜひご覧ください。

wadamakoto.jp

 

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