心がやわらかく繊細になっているとき。
もしくは、
あの時の傷がまだ癒えていないことに
ふと、気づいたとき。
何かじんわりと優しい言葉を読みたくなった。
そんな時、私は詩集を手にとります。
今週、駅前の本屋さんに立ち寄って
1冊の詩集を購入しました。
谷川俊太郎さんの詩集
「バウムクーヘン」。
表紙のイラストは、黄色が鮮やかな、菜の花。
私は「菜穂子」という名前なので
菜の花を見ると、自分が呼ばれているような感じがします。
このやわらかい、親しみのある線に
見覚えがあるなと思ったら
「ミッフィー(うさこちゃん)」で有名な
ディック・ブルーナ氏によるものでした。
バウムクーヘンのように重なり、
人生を形づくる56篇の詩の中から、
私の心に染みた2作をご紹介します。
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すきになると 谷川俊太郎
すきになるのがぼくはすき
だれかがぼくをきらいでも
ぼくはだれかをすきでいたい
すきなきもちがつよければ
きらわれたってすきでいられる
なにかをすきになるのもぼくはすき
すきになると もっとそれをしりたくなる
しればしるほどおもしろくなる
それがうつくしいとおもえてくる
だれかをなにかをすきになると
こころとからだがあったかくなる
かなしいこともわすれてしまう
だれともけんかをしたくなくなる
すきなきもちがぼくはすき
+ + + + + + + +
これを読んで、
わわー、
私は誰かを、何かを、好きになるのが
すごく好きだ!!
と気づきました。
びっくりしました。
そんな単純なことにも気づいていなかったの?自分。
みんなは気づいてた?
詩人はたったひらがな170文字で
全く新しい世界をくれます。
同じ詩集から、もう一遍。
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すききらい 谷川俊太郎
ぼくのすきなことばは
「すき」ということば
「きらい」ということばも
きらいではないけれど
「すき」のほうがおいしい
うそですきというのより
ほんきできらいというほうがいい
きらいのなかに
すきがまざってることがある
そのすきはうそじゃない
すきがいっぱいあるひとは
のんきであかるくつきあいやすい
きらいがたくさんあるひとは
つきあいにくいけどおもしろい
すきでもきらいでもないのはつまらない
+ + + + + + + +
ああーまさに私
「きらい」ということばもきらいではないけれど
「すき」のほうがおいしいから好き。
そうかあ、「すき」はおいしいのか。
すきがいっぱいある、
のんきであかるく、つきあいやすい人。
私の周りの、大好きな人の顔が浮かびました。
大人になって、詩を読む人って、少ないかもしれない。
でも、
心がやわらかく繊細になっているとき
きっと詩は、ゆっくり染みます。
詩集「バウムクーヘン」
谷川俊太郎 著
ディック・ブルーナ 装画
ナナロク社 刊
2018年8月発行
日本を代表する詩人・谷川俊太郎さんの処女詩集
「二十億光年の孤独」も素敵です。
原本は、1952(昭和27)年6月に刊行されたものですが
集英社から、2008年に新装文庫版が出ています。
電子書籍版はこちら。
なお88歳になってもお元気で、
今年2020年も新刊を精力的に発行されている
谷川俊太郎さん。
以前、表参道のお蕎麦屋さんでご本人をお見かけして
食事中につき、そっと遠目でラブコールを送った私。
次にお会いすることがあったら、
「すきなきもちがすきです!」
とご本人にもお伝えしたいなと思いました。
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