あこや貝。
日本の貝で、真珠(パール)を生み出す
美しい貝です。
今年、私はこのミステリアスな真珠の研究をしており
真珠に関する多種多様な文献を読み込んでいます。
そんな中で、真珠の歴史について
とても面白い話をたくさん見つけました。
これは、真珠にまつわる業界の方は
よくご存知の話かもしれないのですが
一般の消費者には、ほとんど知られていないことだと思うのです。
そこで、私が気に入った話を、
いくつかブログでご紹介しようと思います。
○中石器時代
アラビア半島の近く、ペルシャ湾では
紀元前4,000年ごろ(今から6,000年前)に
すでに、人類が真珠と関わりあっていたという
記録があるそうです。
日本では、縄文時代です。
真珠は、世界最古の宝玉(ほうぎょく)なのだとか。
長い長い歴史……。
6,000年にもわたり、人間に愛された海の珠(たま)。
何とも、ロマンティックですね。
○弥生時代
今から1,700年前、3世紀前半の日本。
邪馬台国の女王、卑弥呼(ひみこ)は
魏(当時の中国の国名)に、使節(メッセンジャー)を送ります。
その時、日本から、白い珠、すなわち真珠を
献上品として持参したとか。
魏の国王からのお返しの品にも、真珠があり
その時代の中国の古文書に、日本は「白い珠が取れる国」
と表現されているそう。
真珠は、太古の昔から、珍重された
大切な品だったことがよくわかります。
○奈良時代
1,300年前に編集された「古事記(712年成立)」には
「欺良多摩(シラタマ)」という表記が出てきます。
また、「万葉集(759年成立)」にも
「白珠(シラタマ)」、
「真珠(マタマ、シラタマ)」、
「思良多麻(シラタマ)」などの
記述がたくさんあるそうです。
同じく奈良時代。
756年に、東大寺の大仏(奈良の大仏)の開眼に関する
式典で使った真珠が、
なんと4,158個も残っているそう。
今も、奈良の正倉院に保管されています。
1,260年も前のものです。
○平安時代
「古今和歌集(905年成立)」には
日本原産の「あこや貝」を表す表記として
「阿久夜玉」「阿久也」という言葉が出て来るとか。
調べたところ、
「阿」は、人を親しみを持って呼ぶ時に使う言葉。
(阿父、阿兄、阿母、などと使います)
また、この字はサンスクリット語(古いインドの言葉で、
梵語ともいう)のアルファベットで最初の子音(しいん)でもあり
そこには、「悟りを求める心」「万物の始原」といった
壮大な意味も含まれるそうです。
「久」は久しい、つまり長い時間のこと。
つまり「あこや」「あこや真珠」という貝の名前には、
意訳すると
「永遠の夜を越えて、悟りを求める心のような、
美しい、愛すべき丸い玉さん」
「全ての始まりである、長い時間のような
宝玉(ほうぎょく)さん」
こんな、美しく優しい意味があるようなのです。
この意味を知って
私の心は、じんわりと暖かく、うるおいました。
あこや貝さん。
七色に輝く「真珠層」から
真珠(パール)の光沢が生まれます。
その「あこや貝」から生まれた「真珠(パール)」。
私のネックレスは、真っ白ではなく
「ナチュラルグレー」と呼ばれる色味です。
この写真は、東京のマンションの室内、
くもり空の自然光の下で
iPhoneでパチリと撮影したものです。
何の特殊なレンズも使っておらず
写真の加工や、色加工もしていない写真ですが
七色の美しい「てり」がわかりますでしょうか。
Photo/ Naoko Moriyama
自然光の下のパールが美しくて、
たわむれながら撮影してしまったこの日。
スポットライトなんか当てなくても、
ガラスケースになぞに入れなくても、
そんなものが生まれる、もっともっと前から存在していた
真珠、パールの、有機的な美しさ。
真珠の歴史に興味がある方は
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著書の山田篤美さんは、歴史研究者だそう。
京都大学卒業、オハイオ州立大学修士課程終了。グローバル・ヒストリーにおける真珠史、黄金史が専門。真珠・宝石業界を中心に、真珠の歴史についての講演会も実施している。著書に『真珠の世界史』(中公新書)、『黄金郷(エルドラド)伝説』(中公新書)、『ムガル美術の旅』(朝日新聞社)。『Brand Jewelry』誌(Word Labo社)に宝石に関するエッセイを連載。
2018年5月15日 追記:
一般社団法人 日本真珠振興会
真珠のプロSA(シニアアドバイザー)の資格を取得しました。
記事内の史実の出典:
一般社団法人 日本真珠振興会「真珠検定」テキスト、
「真珠の世界史 - 富と野望の五千年」中公新書・山田篤美 著
より抜粋
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