こんにちは。
ブランドコンサルタントの守山菜穂子です。
以前「センスはどうやって作られるか」
という記事をこのブログに書き、たいへん大きな反響をいただきました。
あの時は、自分の中で、この話題について
「書き切った、一段落した」
という気分になったのですが
また最近、思うことがあり、ブログにしたためることにしました。
前の記事から読みたい方はこちら:
さて、「センスがいい」
には、実はいろいろな方向性があります。
例えば、
アニメファンにはアニメファンの
ビジネスパーソンにはビジネスパーソンの
ヤンキーにはヤンキーの
主婦には主婦の
「センス」というものがあります。
その世界を取り巻く人が、尊敬の念を持って
「一段、集団から抜け出しているさまがすごく良い」と感じる時、
「センスいいね!」という褒め言葉になるように思います。
ヤンキーたちが、華やかな龍の絵と「四露死苦」の文字を
学ランの背中に入れることも
主婦たちがお惣菜や、キャラ弁や、お菓子を
手早く美しく作り上げることも
それぞれの世界で「センスいい〜」
と、表現されることでしょう。
先のブログに
「センスは、数を見ることで培(つちか)われる」
と書いたのですが
ある集団に所属しているだけで、常時たくさんの事例を見ていることになりますから
自然に、ジャンルに対するセンスが付いて来るのです。
自分には気付けなかったアイデアや、
華麗なテクニックを見たときに
人は「センスがいいなあ」と思うようです。
さて、「センスがある」を、自分なりに定義できたその後。
「その先にある何か」
を言葉にしたくて
ずっと探していたのですが、
やっと見つけました。
その表現は、「洗練されている」。
仕事の進め方が、洗練されている。
ホームページのデザインが、洗練されている。
ブログの言葉使いが、洗練されている、
ジャケットの着こなしが、洗練されている。
立ち居振る舞いが、洗練されている。
洗練された「生き方」をしている。
こんな言葉が並べば、それだけでうっとりしてしまいます。
「大辞泉」によると、「せんれん」という言葉には
3つの漢字が当てられています。
洗練 / 洗煉 / 洗錬
【練】は、生糸をねって絹を作る様子から、
何を加えて質をよくする、心身や技を鍛える。
さらには時間が経つことでなれてうまくなる
などの意味がある字です。
(たった1文字にこんなに深い意味があるなんて、
日本語って面白いですね。)
【煉】は、
鉱物を熱して不純物を除き、良質のものにすること。
煉瓦(れんが)の「れん」ですね。
【錬】は金属を精製したり、熱してたたいたりして、
良質のものにきたえ上げること。
錬金術(れんきんじゅつ)の「れん」です。
転じて、心身や技をきたえ上げるという意味もあります。
「洗練」という言葉には意味がふたつありました。
物を洗い、または練ってよくする意から、
1 詩歌・文章の表現を推敲して、よりよいものにすること。
2 人柄や趣味などを、あかぬけのした優雅・高尚なものにすること。
言葉の成り立ちの意味を調べて行く中で
洗練されている
という言葉に無性に魅力を感じた理由がわかりました。
洗練されている
という状態は、私にとっては
「デザインされている」と
同義だったのです。
繰り返し、熱して、叩いて、練り上げて、鍛えて
無駄を洗い、削ぎ落とし
複数の視点で、違う方向から眺め
折に触れ、立ち位置を確認する。
そんな「立体的な作業」が「洗練」を生むのです。
「センスがいい」は
時に、瞬発力で得られることができますが
「洗練されている」は、長い時間かけて作られた状態のことでした。
「いつもセンスがいい人」
は、
「洗練されている人」
に近づくために必要な、
進む方向が間違っていないよ
という、道しるべのようなものですね。
一般的に、洗練されているという言葉は
若い人に対して、あまり使いません。
時間をかけたことや、積み重なっている状態が評価されるため
長くひとつのことをしている人や
中高年、年配の方、ベテランの域の方にこそ
ふさわしい褒め言葉でしょう。
「洗練」にゴールはないし、
毎日が挑戦である。
こんな気づきが、私の人生の後半を改めて面白くしてくれました。
メモ。ファッションではなく、スタイルを追求する。
— 守山菜穂子 ブランドコンサルタント (@nao_moriyama) 2017年11月25日
Photo / Naoko Moriyama
トップの写真は、ルイ・ヴィトン表参道のファサード(正面の外装)。
私は正方形、正円や正三角形、幾何学模様などがとても好きなのですが
長い時間かけて洗練されてきたカタチだからだと思っています。
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