守山菜穂子 | Mint Days

ブランドコンサルタント 守山菜穂子のブログです。

埼玉県・新座総合技術高校で講演しました

2023年12月25日、
埼玉県立新座総合技術高校のデザイン科1年生 41名に向け、
キャリア教育の講演を行いました。

快晴の冬の朝!

 

埼玉県立新座総合技術高校は、
埼玉県新座市にある、
・工業(電子機械科、情報技術科、デザイン科)
・商業(総合ビジネス科)
・家庭(服飾デザイン科、食物調理科)
の専門学科が設置された「複合型専門高校」です。

埼玉県立新座総合技術高校のホームページはこちら

nsg-h.spec.ed.jp

 

校内案内図を眺めていたら、
「ロボット制御室」「CAD室」「ハードウェア実験室」
「プログラミング室」「デッサン室」と
専門的な部屋が並んでいて面白い!

これが専門高校かあ。大学みたいですね。

 

待合の教室にあった、ラクガキか、補習の板書か。

サイン、コサイン、タンジェント!
って、言葉だけ30年ぶりに思い出したけど、
なんの数式だったっけ。

 

今回、講演のご依頼をいただいた時に、
「あえて、学校の先生が話さないようなことを話そう」
と考えました。

 

教育のプロである、先生方が考えている
万全のカリキュラムというのが、
高校の1年間の授業のベースにあります。

だから、外から単発で行く私が、お話しできるのは

・学校のカリキュラムにないもの
・あえて、いつもの授業と違うもの

かなと考えたのです。

 

今回は50分間の授業×3時間(午前中いっぱい)と
長めのお時間をいただいたので
以下のような構成にしました。

●1時間目「社長」のなり方

●2時間目 社会はアーティストを求めている

●3時間目 セルフ・ブランディングの技法

 

いよいよ授業開始。
今回は黒板は使わず、
プロジェクターを使ってスライドを投影します。

デザイン科の教室なので、机が広い! いいですね。

 

学生さんたちは1人1台、タブレットやPCを持って
講演資料を見ています。

別途、書き込み式のワークシートを作りました。

 

講師業を長くやっているので
「人から聞いた話は忘れるけれど、自分で考え・書いたものは忘れにくい」
と知っています。

だから、大事なことは自分で書いてもらえるように
書ける場所を準備しておきました。

 

●1時間目「社長」のなり方

私は子どもの頃から、社会人になるまで
「社長になりたい」と思った事は一度もないのですが、
結果的に今、株式会社の代表取締役をやっています。

なぜ、こうなったのか?を皆さんに向けてお話ししました。
題して「社長のなり方」。

私の学生時代は、
放送委員、アルバム制作委員、文化祭の実行委員、
部活では吹奏楽、バンドなど
みんなでワイワイと集まるのが大好き。

「ずっと陸上に打ち込んできました!!」みたいな一本筋がある方が
うらやましいのですが、私はそういうのはなくて
その時々で、学校内にあるなんとなく楽しそうなことを
見つけて、やっていた感じです。

ファッション雑誌が好きで、
雑誌のイラストやファッションコーディネートの投稿コーナーに
よく送ったりもしていました。

今思えば「発信すること」が好きだし、
得意だったのかと思います。

 

自分にとっての転機は美術大学に入ったことですが、
そこでも、これといった抜群の成績を残せていたわけではなく、
「そこそこ上手に、感じの良いものを作れる」程度の
実力だったと認識しています。

(周りに、ものすごいアーティスト、デザイナー予備軍がたくさんいました)

 

広告業界に入り、出版社に転職し、会社員を16年間やる中で
「世の中には伝えたい人がたくさんいる」
「伝えるための技術や、熱意がある」と知りました。

 

現在は その「伝えたい」人たちに向けて、
「伝えるための技術や熱意の持ち方」をお教えすることを
仕事にしています。

得意なことを人に教えるのが
「コンサルティング業」「講師業」。
私も学生の時、こんな仕事があるとは全く知らなかったな。

 

この後に、「美」には正解がない、定義がない
という話もして、
自分が何を「美!」と思うのか?を言語化して、書き出し
周りのお友達とシェアするワーク
などもやってみました。

 

「推し(好きなアイドル)の顔が美です」という学生さんがいたので
顔のどこが具体的に美?と聞いたら
「鼻筋です。鼻筋がとにかく美で」
という答え。

「推しの顔が美です、というのと、推しの鼻筋が美、は、
解像度が全然違うよね!」
なんて話をしたら、目が輝いていました。

 

「家のネコが美」という方にも、同様に
「ネコのどこが美なの?」と深掘り。
ふわふわの毛、なんていう一般的な答えをイメージしていたら
「薄い耳です。ペラペラに薄い耳が、美!」という回答。

そういうの、どんどん言語化して行こうよ。

 

自分の「美!」がわかっていたら、
それを仕事にすることができるよ。

「美=お金」になりうるよ
という話もしました。

 

●2時間目 社会はアーティストを求めている

次の時間は「美!」の仕事が、現代社会で
どれだけ必要とされているかというお話。

 

例えば、アート市場が白熱していること。

デザインが、商品やサービスに必須なのは、もう当たり前。

企業の中では、イノベーション、ダイバーシティー推進のために、
新たな発想、新たな視点から0→1のモノ作りをできる人が
熱狂的に求められていること。

美術畑出身の人が、様々な企業で
ビジネス面で活躍していること。

などをお伝えしました。  

 

そして、自分の好きなものを3つ書き出し、
それにデザインや、アートを掛け合わせたら、どのような仕事が作れるか?

自分にとってお金は、どのようなものか?

こんなことを考えるワークも行いました。

 

今日は全員が、デザイン科の学生さんなので、
自分が手を動かして作品を作るのが大好き。
日頃、アニメ絵などを描いてSNSで投稿している人も多いようです。

 

自分が好きな絵を描いているだけなら、趣味。

それを、誰かに必要な形で届けることができたら、
買ってもらえて、お金になるよ。

 

ちょっと抽象度が高い内容だったので、
高校生の皆さんには難しいかなぁと思ったのですが、
ほんとに一生懸命考えていただいて。

後でいただいた感想も高評価だったので、ほっとしました。

 

私が以前から、高校や大学のあちこちで講演させてもらっている中で、
私がとても気になっていることがあります。

それは、学生さん達は「仕事が苦痛なものだ」と
思い込んでいる節があること。

「仕事がしんどそう」
「お金を稼ぐのは、苦痛や自己犠牲を伴うこと」と
思っている学生さんが、とても多いのです。

 

たぶん、ご家庭で、お父さんやお母さんが
「仕事が大変だー」とか、「しんどい」と話しているのを
ずっと、聞いているんでしょう。

学生さん達にとって、仕事をすることが「希望」になっていない
というのが、とても気になっています。

 

ですので、学校で講演するときは、

「仕事をすることには、喜びがあるよ」

「自分の好きなことを、仕事にすることも
 意思を持てば、必ずできるよ」

「好きを仕事にしてみようよ。そしたら人生楽しいよ」

とお伝えするように心がけています。

 

「好きを仕事になんて、夢物語だ!」と
おっしゃる方もいるかもしれない。

ただそれは、大人が、いろいろあれこれやった後に
たどり着けば良い場所だと思うんです。

また私の周りには、実際に好きを仕事にして
充実した毎日を送っている人もたくさんいるので
若い世代には、敢えて、言い切って伝えてしまおうと考えています。

 

●3時間目 セルフ・ブランディングの技法

3時間目は、自分のブランディングを考えるワーク。

「私はこういう風に、人を安心させたい」と
丁寧に考えて文章を書いたり
自分を動物や食べ物に例えてみたり。

さまざまな切り口から、
自分のブランド・アイデンティティー(こう思われたい)を
言語化していきます。

 

「そう思われるために、自分は何をするべきか」「何をしてはいけないのか」。

非常にシンプルな内容なのですが、
これまた、学生さんが猛烈に真剣に取り組んでくださっているのが
私はとても印象的でした。

 

後日、参加した学生さんからいただいた
感想の一部を紹介します。

自分の考えが否定されず思ったことをそのまま言えたので楽しかった。
自分のやりたい仕事をそろそろ決めないとと思った。

このような機会はなかなかないので今回いろいろなお話を聞けて嬉しかったです。お話を聞いたり、ワークシートを使って、グループで話し合うことで、自分にとっての「美!」は何か、自分の得意なこと好きなことはなにかを再確認したり、自分なりの言葉で普段考えることのあまりない自分の質感を言葉にしてみたり、ブランド・アイデンティティについて考えたりして、自分のことを詳しくしれた気がするし、自分に足りない部分や、言葉にすることの大切さをしれたので良かったです。今日のことをこれからの学校生活や、進学、就職活動に活かしていきたいです。

企業に前から興味を持っていて講義の内容がとても自分に合っていました。自分を「質感」で考えてみることは初めてでしたが、自分のことについていつもより深く考えることができて嬉しかったです。ワークについて話し合う時自分と同じ感性の人がいることに少し驚きました。お金の稼ぎ方、自分の価値の上げ方、社会が求めているものなどが分かりました。

ブランディングについてよく分かりました。また、自分のデザインの好きなところや将来なにになりたいのかなどを実際に文字にして表したことで、自分の中で気持ちの整理ができました。

美術をやっても就職できないと言われた事があったので、今日の講義でかなり元気が出ました。自分を分析して知ることで、自分に合った職種が見つけられることを知ったので、自分にもっと興味を持とうと思いました。

今までの生活でお金の稼ぎ方や自分のブランディングについて考えることはなかったので改めて考えることができて良かったです。また、将来どうやってお金を稼ぐかは漠然としていて不安もあったので、美術やデザインでこういう稼ぎ方もあるよと教えてもらえて安心できました。

 

ご参加ありがとうございました!!

 

授業の後、校内を少し見学させていただきました。

学生さんのデッサン。うまいなあ。

新座総合技術高校のデザイン科からは、
美大や、デザイン系の専門学校に進む人、
また地元の印刷会社などに就職する人がいるそうです。

 

絵の具で描かれた、平面構成と絵画。

 

圧倒されたのがこのポスター類。
高校生で、このレベル、作れちゃうんだなあ。

私が学生の頃、25年前と比べて、
明らかにグラフィックデザインの技術が上がっています。
コンピューター、ソフトウェアの進歩が大きいと思いますが
プロ・アマの見分けがつかないところまで来ているな
と思いました。

 

新座総合技術高校は、産学連携のプロジェクトも多数。

こちらは埼玉県の広栄交通バスが運行する
夜行バス「ブルーライナー」の外装を、
高校生がデザインした企画。

 

こちらは、
イトーヨーカドーと、地元の高校4校のコラボで、
お弁当の開発なども行なった実績。

このレベルの産学連携プロジェクトは、私が大学生の頃は
「大学で初めて取り組む」レベルだったと思いますが
高校でも盛んに行われていることに驚きました。

 

新座総合技術高校 デザイン科教諭で
彫刻家でもある青木邦眞さん、
デザイン科教諭の皆さん、
学生の皆さん、ありがとうございました。

私自身も、初心に帰ることができた半日でした。

 

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