守山菜穂子 | Mint Days

ブランドコンサルタント 守山菜穂子のブログです。

デザインの「セカンドオピニオン」を求められる

医療の世界に、
「セカンドオピニオン(第2の意見)」という言葉があります。

今、かかっている「主治医」の考え方を
他の医師に提示して、第2の意見を求める
という手法。

セカンドオピニオンの目的は、「医師を変えること」ではなく
患者さんが納得し、最善の策を選ぶことができるよう
複数の医師が、多角的に情報を出し合うことです。

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写真= 立ち位置はどちら? Photo:Naoko Moriyama

 

さて、私がブランドコンサルタントの仕事をしている中で
クライアント(企業のブランディング・広報担当者)から、
デザインの「セカンドオピニオン」を求められることが
非常に良くあります。

このパンフレット、どう思います? 

デザイン会社との契約内容と、金額。
客観的に見て、どうですか?

WEBを全部イチから作り直したいのだが、どう思う?

このような質問を、日々、いただいています。

中には、こんな質問も。

このデザイナーを、信じていいと思います?

 

私は基本的に、クリエイターの味方です。
また、デザインは問題解決の手法であり
「正しいオリエンがあれば、必ず正しいデザインができてくる」
と信じています。

その上で、

「このパンフレットは、ある視点が不足しているので、
 次回の改定の際は、追加で入れていただきましょう。」

「デザイン会社との契約。これはいただけないですね。
 再度、交渉しましょう」

「WEB制作会社を変える必要はないです。
 今の会社に、丁寧に依頼しなおしてみましょう」

「オリエンの方法を変えましょう。
 デザイナーから上がってくる案が、明らかに変わるはずです。」

こんな風に、ひとつひとつ、回答しています。

 

時には、デザイン・WEB制作会社と、
クライアント、私の三者で、ひとつの方向性を決めるため、
一緒に打ち合わせすることもあります。

 

クライアント側は、往々にして
「このパンフレットは好きじゃない。だから、デザイン会社を変える(切る)」
という単純思考が多いように思います。

はっきりしたオリエンもせず、
依頼時に「お任せ!」と伝えておきながら
上がったものを見て「好きじゃない。センスがない。ダメな会社だ」
と判断する。
これは、はっきり言って、発注側の勉強不足です。

どんなデザインにしたいのか、それはなぜか。
自社が向かっている方向性はどちらか。
顧客は誰か。
自分の口で、説明できるようになっていただきたいのです。

私がコンサルする場合は、そのモヤモヤしたイメージを
言語化できるよう、
ワークなどを通じて一緒に作り上げていきます。

イメージを言葉にするには、技術が必要です。
また、色・形・印象や、紙の印刷・WEBに関する
ボキャブラリーも必須。
もちろん「慣れ」もあります。回数を重ねるごとに
伝わるようになります。
一緒に学んでいきましょう。

 

また、クリエイターの側も
「クライアントに言われたから、その通り作る」という
事なかれ主義が、時おり見受けられます。

「い、い、一体なぜ、
こんな構造になってしまったんだ………(がーん)」

WEB、ツギハギだらけでぐちゃぐちゃ。
パンフレット、重複だらけ。明らかに無駄なページ。
空いたスペースを埋めるため、適当に「飾り」を入れましたよね?
なぜ、こんなことになる前に、止めてあげなかったんだろう。
あなた、プロでしょう!
そこ、頑張るとこでしょう!

こんな風に思ってしまうことが、正直あります。

きっと何かしらの理由があったと思います。
でも、見るのはお客様。
お客様に伝わらなければ、デザインの存在意義がありません。

 

私は、学生時代にデザイン教育を受け、
自分で手を動かしていたのち
社会に出てから20年近く、クライアントと、制作側の
「言葉の通訳」を仕事にしてきました。

 

独立する際には、
「デザイン会社or広告会社」を立ち上げ、アートディレクター的な立場で活動するか
「ブランドコンサルタント」になるか、
さんざん悩んで、結局、後者を選びました。

 

広告会社や、デザイン会社、WEB制作会社で、
ブランディングを手がけているところは多いと思いますが、
それらと、私の立場の、最たる違いは
「自社で制作しない」ことです。

(あ、もちろん、ご依頼いただいて、デザイナーやコピーライターからなる
 チームを結成し、
 パンフレットやWEBなどを作ることも、たまにあるのですが)

基本的に自社で制作しないからこそ、
ブランディングの予算のかけ方、パンフレットやWEBのページ数、
他メディア展開、広告・広報など
全体的な視点にグッと切り込むことができます。

時には「無駄なものを作らない」「敢えて変えない」
「今やっていることをやめる」なども
選ぶことができます。

「東京の会社に頼みたい」というクライアントさんに、
「いえ、費用が高くなりますし、予算がもったいないです。
あなたが活動している地元の会社に依頼して、
事業を一緒に育ててもらってください」
などと言うこともあります。

この中立性が、私のコンサルの信条です。

 

「医療のセカンドオピニオン」が、なぜ生まれたか?
医療は日進月歩で、新しい治療法が次々に生まれ
日々、情報が更新されているからだそうです。

当事者である患者さんはもちろん、
1人の医師が、医療法の全てを把握しているとは限らない。

多角的な目線で、複数のプロフェッショナルが
意見を出し合うことで、
患者さんが目指す最適な人生のための医療法を
選択することができるのです。

 

デザインのセカンドオピニオンも同様。
デザインや印刷、WEBの技術・方式・トレンドなどは
日々、進化しています。

 

例えば今なら、この高齢化社会において
ユニバーサルデザインを意識しないデザインは
ありえないでしょう。
 

印刷は全体的に安価になり、
「WEBかPDFで済むよね」と、印刷しない場面も増えました。

逆にいざ印刷する場合は、紙やインク、印刷方式に
しっかり予算をかけて、
「手触り」が残す印象にまで凝るのが、効果的です。

しかし、
型抜き、箔押し、エンボス加工、活版印刷、特色印刷といった
スタンダードな印刷技法を扱ったことがない
若いデザイナーが増えているそうです。

 

クライアントは、自分の会社だからこそ、痛みが多すぎて
判断できない場合がある。
深く考えるのが怖い部分もありますよね。

デザイナーは、作るものと自分の距離が近すぎて、
また大切なクライアントへの忠誠を誓いすぎて、
またはお金が絡んで、
大切なことを断れない時がある。

それらすべてを乗り越えて、
クライアントの「ありたい姿」を、
デザイナーたちと一緒に全力で作っていけると
良いなあと思うのです。

 

私の理想は、
「菜穂子さんの意見を聞いたことで、今のデザイナーを信じることができた!」
と、クライアントに言っていただけること。

 

また「菜穂子さんのコンサルが入ったことで
オリエンがわかりやすくなり、
無駄な打ち合わせがなくなり、
作る必要のない<捨て案>を出さずにすみました!」
と、デザイナー達に言っていただけること。

 

発注側と、受注側の、コミュニケーション不足を解消する。
そんな仕事がしたいと思っています。

 

ずっと「相談」と「打ち合わせ」ばかりが続いていて、
なかなかデザインに入れない。
いつまでもフィーが発生しなくて辛い。
関係各所が多すぎて、オリエンがまとまらない。
いつも何案も提出させられて、結局どれにも決まらない。

こんな状態に巻き込まれている
デザイン関係者からのご相談も、お待ちしています。

その状態、ちゃんと解決できますよ。

 

 

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